週刊漫画TIMES - 豚か狼か

俺たちの小石川 尾々根正『マエストロの暇つぶし』  

週刊漫画TIMES
06 /27 2018


 競馬ゲームが好きなんです。育成してレース出して、のんべんだらり…とやるのが良い。ゲーセンのメダルゲームの『スターホース』シリーズはいいですね~。プレステ4は実質ウイニングポストなんだけど、毎年データちょっいといじる程度の変更でさすがにどうかと。『スターホース』シリーズをプレステ4で出したら絶対買う。そして、おそらく引きこもりになる自信がある。



 さておいて。



 この競馬ゲームというは『配合による名馬誕生』というのがどの作品も共通している面白さだろう。たまに偶発的にとんでも無い馬が誕生する。だいたいこの手のゲームはバカスカ馬を作るので次第に名前ストックか尽きてくる。いよいよになった俺は有名犯罪者シリーズを展開し、こともあろうにツ〇ムミヤ〇キという馬が異常なモンスター馬として爆誕してしまった。出るレースのほぼ全てを優勝してしまうという……なんというコトだ!!そして、この『偶発性』というのはクセになる。



 マンガも時として『偶発的』にとんでも無いキャラクター(モンスター寄りに)が誕生するような気がする。




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 それが小石川出人!!



 さて、今回は当ブログでちょこちょこ書いてました 尾々根正先生の『マエストロの暇つぶし』の完結の二巻です。この巻は何と言っても小石川に尽きます。ええ『このマンガで好きなキャラは?』と聞かれたら『ブッちぎりで小石川』と答えるでしょう。



 その小石川氏なんですが




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 主人公・甲本に気のある同僚の姫先生はお見合いをキッカケに小石川氏から積極的アプローチをうけ…



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 気持ちが小石川氏にグラついてきます。


 甲本の方は『お見合いした』と伝えても素っ気無いし、この小石川氏はイケメン&大きな会社の社長&お金持ちで性格も良い……ときてます。これでは実はかなりミーハーな姫先生は陥落寸前でした。



 でしたが



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 重度のシスコンが発覚し



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 姫先生、ドン引き……。



 しかも、大好きなお姉ちゃんはすでに亡くなっていることもあって、シスコンはかなりめんどくさいコトになってます。




 このキャラクターは『すごい面白い』と感じた。彼は本当に完璧で良い人物なのだろう。シスコンを除いては。ただ、このシスコンがあまりに強烈で……凡人のトータルポイントが100ぐらいなのが、小石川氏は1000ぐらいあるんだけど、シスコンでマイナス2000ぐらいの数値を出しちゃってます。


 でも、そのシスコンが彼を彼として成り立たせているし、これが普通の恋愛観の持ち主だったら『立派な人』として周囲から慕われていたはずなんですよね。その『救われなさ』が妙に惹かれるんです。これはすごいキャラクターだ。







 …が、実はこの小石川氏には後日談がありまして、なんつーか本領発揮しております。このシーンで彼は主人公・甲本を責めたてるのですが『なんだか彼を描いていたら甲本の方が悪いような気がしてきた』と尾々根先生がツイッターで言及してたりします。そう、彼の強烈なキャラクターは創造主であり神である作者すらおびやかしてしまったのだ!!



 このキャラクターは今後の尾々根先生の作品で間違いなくリボーンするだろう。そんな確信がある。マンガのキャラクターというのはそういう偶発的にモンスターができちゃう場合もある。『マエストロの暇つぶし』の単行本はその巻でストーリーに絡むキャラが表紙に出るのですが、小石川氏はいない。多分、彼は規格外として出させてもらえないのだろう。例外でなくて。



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風格            向後次雄・宇治谷順『なみだ坂診療所』

週刊漫画TIMES
06 /13 2018


 バトルマンガなどで修行を重ね『この上なく強くなったと勘違いした主人公』が居る。その主人公が旅路の途中で見た、いかにも田舎道場からは人当たりの良い年老いた師範代が出てきた。慢心した主人公は『なに、旅の手土産のひとつにでもしてやるか』と組み手をするも、柳の如くスルリスルリといなされて赤子のように組み伏させてしまう……。なんてことだ!!世の中にはまだまだ強いヤツなどいくらでも居る…と悟る。


 風格…である。




 さて、マンガブログを続けているうちに疑問として浮かび上がってきたのが『確かに今はネットとかで良いマンガについての情報を拾えるようになったが、本当にスゴい作品を見逃して無いだろうか?』とか『マンガの批評も少しずつ定着しているような気がするが、はたしてその批評する人間の力量は確かなものなのだろうか』そして『自分はスゴイ。作品を見る目があるなんて慢心してないか?』というコトだ。




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 そして、そういう『風格』を持つ作品というのが確かに在る、と嬉しくなるのが、週刊漫画TIMESに連載されている『なみだ坂診療所』だろう。



 先に書いておく。マンガというのは個々の楽しみも尊重されるし、全体的な評価が低くとも、その個人が『最高だ!!』と思ったら『その気持ちを大事にして欲しいな~』とは思う。が、この『なみだ坂診療所』は最高峰の領域に在る作品と断言したい。これが最高峰の領域でなくて何だ…という気すらする。


 しかし、もうすぐ連載900回を迎える『なみだ坂』はマンガ批評が盛んな今であっても話題になるコトも無いし、賞にもならない。それどころか単行本も刊行されてない。



 それでも言いたい。この作品は『最高峰の領域に在る』と。



 さて、今回は先週・今週に掲載された『ひかりのうら』編のストーリーを確認してみたい。




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 市川聡美さんはフラワーアレンジメントの教室を開いていたが、ある時を境に教え子が来なくなり教室を閉めることになる。



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 『ひかりのしもべ』という宗教の信徒であることが広まり、人々が気味悪がり恐れたからだ。



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 そして『子供食堂』のボランティアを始めるも



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 やはり子供たちはパタリと来なくなってしまう。



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 そんな彼女は子供を助け身代わりとなって事故にあうも



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 『ひかりのしもべ』の信徒たる自分は輸血を拒否する…と考えを譲らない。


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 倫理観が問われる!!


 しかし、時間が無い。主人公・織田はこじつけに既成事実をデッチ上げ、半ば強引に手術を施し、聡美は生き延びる。



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 聡美はかつての親友をいじめる側に回ってしまったコト

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 そして、取り返しのつかないコトに対して、生きる指針となってくれたのが『ひかりのしもべ』だったと明かす。



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 豪胆な織田はそう言い返す。そして、最後のページで聡美が語ったこととは……?




 …とまあ、これだけ濃厚なドラマ(これでもかなりダイジェストにした)を二回で着地させてしまうという作品を20年も続けてきたというのは偉業と言い切っても良い。また、今回の『子供食堂』という要素など現代に即した社会問題を取り上げている。この作品は常に最先端を行っている。



 何より、感じるのが『静かなる怒り』である。現代の作品に於いて『怒り』を描いているものはかなり減少傾向だ。怒りは感情である、それを感情のままに振りかざさず作品として問題提起をキチンとなされているし、受け取った読者は各々考えさせられるだろう。



 もう一度書く。『なみだ坂診療所』は最高峰の領域に在る作品である。決して目立ちはしないが、その風格は偉大だ。


勝ち負け…?             星野茂樹・石井さだよし『解体屋ゲン』

週刊漫画TIMES
06 /12 2018


 最近よく書いているコトなんですが『無限のリヴァイアス』で主人公たちの乗る宇宙船が攻撃受けて、反撃もままならない危機に於いて、みんながパニックになってギャアギャア騒ぎ立てるんですよね。で、ヴァイタルガーダー(いわゆるヒーローロボット)を操作している祐希が叫びます。


 『みんな丸投げして文句ばかりたれやがって!!それで何かした気になりやがって!!何もしてねぇんだよお前ら!!死んでんのと一緒だ!!俺は勝手にやらせてもらう!!』



 …というセリフにとても衝撃を受けました。この作品はもう20年前のテレビアニメですが、ネットが生まれながらに当たり前iになっている方も珍しくない現代に於いて、つねに心に留めておきたい言葉だ。



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 さて、度々記事にしてます『解体屋ゲン』ですがね今回は一話完結の『レッツワーク!』です。



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 本業の経営コンサルタントがうまくいってない野島秀美はファミレスのバイトで食いつなぐ日々でしたが、何やらうまい話が転がり込んできました。


 聞けば、相手は『不労所得』で実に裕福で悠々自適な生活者を送っている明戸氏でした。



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 が、その不労所得も親から受け継いだもので…



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 臆面も無く『働いたコトは無い。働いたら負けだと思っている』とのこと。


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 さらには『結婚したらアナタも勝ち組の仲間入りです。一生の安心が約束されます』と続ける。



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 秀美、キレる!!



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 秀美、ムシャクシャしてハンマーを振り回す!!




 …という回でした。




 ここで考えてしまうのが『戦っても無いヤツが自称・勝ち組』という面白おかしい盲信してしまっているコトです。何もしてないのに『自分は何かした』『自分はスゴイ』と訳の分からない虚栄心が固着してしまっているコトだ。これはもう『死んでんのと一緒』である。



 まあ、俺も『そういう生活もいいな~』とは思いますが、おそらく『これじゃ充足しない』って思うんですよね。働くのとか、そういうのが人一倍カッタルイ人なんですけど、なんというか『そういう日々』の中に『満たされた気持ち』というのが在るって気はします。この『何かをした気になっている』ってのはとんでも無い魔物で、人の気持ちを簡単に腐らせていくんです。知らず知らずに。



 それが別に『仕事』でなくてもいいとは思うんです。何かに挑み続けるという過程が無いと人は満たされない生き物なんだと思うのです。それが無くなったら『死んでんのと一緒』なのだろう。



 死んだヤツの言葉に惑わされないように在りたいですね。


差別は世界に在る             usi『デリバリー』

週刊漫画TIMES
05 /22 2018



 『差別はいけない』という考え方をする人は人間としてとても素晴らしいとは思うけど、幼稚なヤツだなとは思います(酷ェ)。俺にとっての差別は『在るもの』として認知されている。



 例えば、俺ってオタクじゃないですか?普通の方からすれば『気持ち悪い』と思うだろうし、それを仮に一人説き伏せたとして、世界中が『気持ち悪い』って思っているのを何とかできるものだろうか?『うぬぼれるなアムロくん!!たった一機のガンダムでどうにかなるほど戦争は甘いもんじゃないんだ』というニュアンスに近い。



 そして


 俺だって、心の中でバカにしとるヤツなぞいくらでも居る。例えば、スーパーの障害者用駐車場で必死こいて止めたがる黒塗りのワンボックスDQNとかああいうゴミみてぇなの死なねーかなと思っているし。多分、オタクなんて『その程度』ぐらいに思っているのが普通でね……だからオタクが声高に『知らないのに差別すんな』的な論調には賛同しかねる。そりゃ、傲慢な考え方だよ。差別は誰の心にも在るよ。



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 週刊漫画TIMESで時々載っている usi先生の『デリバリー』が面白いのだが、今回は特に印象深い。



 まず、サブタイトルの『現実を見てみな!』であるが、これは読者にも投げかけられたような言葉なようにも感じる。これが良い。



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 ストーリーは風俗嬢の送り迎えを仕事にしている桜坂が、ひょんなコトから訳アリ少年と出会う。


 少年は母子家庭で『母親を助けたい』と考え、なんとか出来ないか…と相談される。



 そこに桜坂の


 中坊じゃ何もできないって現実がわかる


 …と叩きつける。


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 一方で、桜坂は林檎(源氏名)のシングルマザーだからこそ、子供には不自由させたくないけど、それだけの稼ぎを得るには今の仕事しか無いので息子に知られたら幻滅されるのでは無いか…という苦悩を打ち明けられる。



 
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 待ち伏せていた少年は林檎さんの息子であるコトに気付いた桜坂であったが、健太(少年)はかなり賢くシッカリものであったので、『じゃあ、健太が感考えているような仕事だったらどうする?』と訪ねるが、自立を考えていただけあって『感謝している』とのコト。



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 クライマックスシーンでは桜坂が引き合わせて、お互いの胸の内を打ち明けて一件落着!!



 …ここで自分が好感が持てるのは『当人たちは、こういう仕事は胸を張れるもんじゃない』として描かれているコト。これに対して『職業に貴賎など無い!!』とか『立派なお母さんだよ!!』って第三者が言っちゃいけないと感じてます。それはね、現実を見てないんです。仮にアナタ一人がそう思ったトコロで、この世界の意識を変えるコトができるの?差別は世界に在るんだぜ?二人にとっては世界が問題なんだぜ?


 …って、自分は思っちゃうんですよね。



 この『デリバリー』という作品は実に理性的に描かれている。どうしたって差別や偏見は無くならないという現実に対して、感情的になって無い。差別・偏見というのは感情だと思う。それに対して対抗できるのは理性であり、それから考える力だ。自分はやはりそいう考え方のが馴染む。


不可避の間違い             沖田龍児『ヤバい女に恋した僕の結末』

週刊漫画TIMES
05 /15 2018

 これを読まれている方も心当たりがあって、人から相談事を持ちかけられたことはあるだろう。


 例えば『あの子が気になるけどどうやってアプローチしたらいいだろう?』とあって、『アナタはインドアが趣味だけど、どうも彼女はアウトドアだ。だから、そういう方向で楽しい場所に誘ってみてはどうか?仲良くなったら旅行とかステップアップしてみるとか…。とにかく様子みながらやっていこうよ』みたいな無難なアドバイスを出す。


 が、どういう訳か『大好きな萌えアニメをひたすら語って嫌われた』みたいな流れ。もちろん、それも次第に理解をいただくコトは大事であるし、場合によっては捨てなくてはならない。しかし『なせそんなコトをした?』みたいな経験だ。コイツ…何がしたい?それとも日本語理解できないのか?と頭を抱えたりするコト。



 そして、思った。



 ひょっとすると個々の人間は特定のコトに関しては『間違うようにプログラミングされているんじゃないか?』と。そうじゃないと説明つかないような人間がゴロゴロしている。ちなみに俺は生まれて初めての言葉が『ゴレンジャー!!』であったので、多分クソオタとして生きる為にプログラミングされてきたと思います。




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 さて、今回も 沖田龍児先生の『ヤバい女に恋した僕の結末』の続きです。前回記事はコチラで。


 叶奏さんを自称・亭主に連れ戻されてしまった護ですが、その彼女が置いていったスマホから『新たな男』から着信が!!


 茫然自失の護…



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 そこに居合わせた歳の離れた幼馴染・美波は①すかさず応対する



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 ②会話の流れから現状をアッサリと把握し、護に『だまされていたんだよ』と伝える。



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 ③さんざんな誕生日だったけど、まだ間に合うから気を取り直して楽しいイベントにしようよ!!



 …とまあ、美波はズビスバと正解の選択肢を見つけ出し、護に提示していく。そもそもにこんなエロゲヒロインのようなコが身近に居てくれるってだけでもスゴいのですが……。







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 はい!!不正解!!



……やはり人間というのは個々の特定のコトに関しては『間違うようにプログラミングされている』としか思えない。すいません、俺、前回に続いて今回もコレでゲラゲラ笑ってしまいました!!



 ひょっとして、このマンガは『護が選択肢を次々間違っていく』というコメディではないだろうか?これは実に楽しみだーーーッ!!



ユーモアの必要性            沖田龍児『ヤバい女に恋した僕の結末』

週刊漫画TIMES
04 /30 2018


 運転していると前を走っているのがフラフラチンタラしてやがる。危なっかしい。どうもスマホ運転しているようだ。



 心の中で『チッ…』と舌打ちし、信号待ちの横並びで『どんなヤツだ?』と確認してみたら




 


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 こんなんだったらどないすべぇ?



 多分、俺は五歳で最後になってた寝小便以来のおもらしをジョーしてしまうだろう。そして、心の奥底で『あ…結構面白いかも?』と思ってしまうかもしんない。シートベルトはシッカリしてるトコロとかそのギャップ幅に。



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 そして、トドメである。



 俺はこのコマを見て爆笑した!!『日本人のほぼ全員がこーゆーの奥手で慣れてないから!!』って。



 これが沖田龍児先生の新作『ヤバい女に恋した僕の結末』の冒頭である。このブログだとチャンピオン読者比率高めだと思うんですが、『家族のオキテ』を覚えている方も居るでしょう。




 主人公・森岡護は新進気鋭のホラー作家で30歳童貞である!!そんな彼が



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 オタクの理想を具現化したような彼女をゲットしてしまいます!!真面目な護クンですが、その真面目さ故に早く男女合体してウルトラマンエースになるんンだ!!と焦って先走ったところに



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 夫を名乗る男が登場!!



 え?どおゆうコトですか?と混乱している護に


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 亭主パンチ炸裂!!!!!!!


 すかさず『この女は清楚なオタク受けしそうなナリをしてますが超ヤリマン』と語り(雑な説明)



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 護クンはKOされてしまいました。



 …というのが今現在までの内容なんですが、なんでしょう?ゲラゲラ笑いながら読んでいる自分がいるんですよ。『変身』を書いたカフカ自らがストーリーを語る時、笑いながらやってたという逸話を聞いたコトがありますが(うろ覚え)、何かその気持ちが少しだけ理解できたような気がする。そして、コレはマンガのキモなんだな~と思う。



 マンガは読者が読むものである


 そして、読者は退屈なものなど読みたくない


 その退屈に対してユーモアはとても有効だ



 …というコト。自分は『ユーモア』というのは『ゲラゲラ笑うもの』という捉え方もあるんですが、同時に『愛想』というのもあります。ハードな作品にこそユーモアは必須なんじゃないかな~っても思います。



 少なくとも読者が『つまらない』と感じる作品には『ユーモア』が感じられず『ひとりよがり』だったりするんですよね。大雑把なストーリーを書きましたが、この作品はそのユーモアの密度がハンパ無い。やはりマンガとしての面白さが充実しているのだ。



 しかし、このマンガはどうなるのか…?



それじゃない!!            佐々木善章・森尾正博『肉極道』   

週刊漫画TIMES
04 /24 2018


 ヒイキにしていた近所の蕎麦屋が高齢化のためか閉店していた。ショックである。


 年に2~3回、その時の気分で食べていた。そこで食べたい時が年に2~3回あったのだ。そこの蕎麦屋でなくてはダメなのだ。



 で、そこがスゲー旨いかっていうと、俺はそういう話をしているんじゃないんだ。メチャクチャ旨い蕎麦屋ならば栃木市の某店が最高である。鮫皮のおろし板でワサビをすりおろす本格派であり、『美味しんぼだけの世界ではなかった!!』と感動した。でも『食べる』ってそうじゃないんだよな~。


 その閉店した店はセットの丼物とか含めて『たまに食べたくなる』のだった。そして蕎麦ともなれば時として『緑のたぬき』が最も食べたかったり、山田うどんのセットであったり、スーパーで売っている冷凍とか『時と場合によって違う』というコト。最高なものがイコールその時のベストじゃないんです。




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 すごい分かる!!


 何?分からない?なぜそれが分からない?



 …と言いたくなるのが今回の『肉極道』のアンサー編だ。前回はコチラで。


 そう、女子会を開いて新たな客層をゲットしようとしましたが、そもそもに料理が喜ばれない…という展開になってしまいました。これはスゲー分かります。『確かに同じ蕎麦だけど、今食べたいのはそうじゃない!!』ってヤツだ。山田うどん入って鮫皮おろしでワサビとかじやないんだ!!あのいかにもな蕎麦であり、腹加減によっては謎メニューのお餅とか食べたいんだ!!



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 さて、彼女を笑顔にしたメニューは何だったのか?やっぱり、これでこそ『肉極道』のメニューなんですよね。『肉極道』という作品は『肉料理のみ』という縛りがありますが、だからと言ってどこそこの高級和牛とがじゃない。だって舞台が大衆食堂だし、掲載誌が週刊漫画TIMESなんですから。



 だけど、埼玉さん(仮称)をはじめ、埼玉寄りのマンガでもあるんで山田うどんとコラボしても全然一向に構わない!!いや、むしろコラボすべきだ!!


誘導から納得へのテクニック        尾々根正『マエストロの暇つぶし』

週刊漫画TIMES
04 /23 2018


 マンガ記事を書くコトによって『自分に言い聞かせている』という側面もあるんですが、今回は特に自戒を込めて。


 ここ最近の全体的な意識の変化としては『飲食店なんかでミミッチイことに腹を立てて店員に当り散らすのは格好悪(ダサ)い』というのがあって、俺個人としては『お互い尊敬をもって対等』というのが理想なんで、良い傾向だと思ってます。なので、そういう意識の変化が今度はマンガの方にも在ってほしいな~という気がします。



 自分たちは『読者という立場に甘えすぎてないか?』という疑問も最近はわいてきた。『ツマラナイのは作品が悪い』という固定観念で判断し、『自分のレベルの低さには甘い』という感じに。読解力の低さを作品のせいにしてしまう…というコト。マンガに対する理解が無いのに、浅薄な見識で作品を語ってしまうコトなど。


 全て、作者や作品に原因を押し付けて、自分を鑑みるというのを忘れちゃいないか?



 そして、マンガ論はネットの普及により増えたけど、ここら辺は『ストーリー』とか『キャッチーな要素』とかが多いのですが、シーンによるテクニックの分析というのは極端に少なくなると思うんですよね。自分はそれこそがマンガのキモって感じるようになってきたので。シロウトにありがちな妄言として『ストーリーはできるけど、絵が描けない』というのがありますが、これこそが『読者の甘えを放置してきた結果』って気もします。ならマンガは最終巻だけ買って、巻頭の前回までのあらすじを読めば十分というコトになる。そもそも『ストーリーなら書ける』なんてヤツには『じゃあ、面白かったマンガのストーリー説明してくれ』で『まあ、どの程度か分かる』。それが面白いなんてこたぁまず無い。



 マンガは伝えるテクニックであり、それの積み重ねが面白くするものだ。ひたすらに地味&地道です。




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 今週の週刊漫画TIMESの『マエストロの暇つぶし』に見事な誘導から納得があった。


 この①の時に男子生徒『え?何か用?』みたいな対応してますが、これがとても重要なんです。そう『いたって普通の対応』=『普通の目安』なんですね。この時に『うわっ!!スゲー美人!!』とやっちゃうマンガもしばしば見られますが、コイツはそんなに『良い手では無い』。『分かりやすい』けど『面白味・深みに欠ける』ものなんです。何より押し付け感があって、これが蓄積されると読者はストレスを感じる。



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 ②では男子生徒が「は…はい」と若干舞い上がった描写にされている。これがこの流れの『キモ』です。年頃の男子生徒は『美人に話しかけられると嬉しい』し、場合によっては『この中から俺を指名したのって……ひょっとして俺って結構カッコイイ?』という悲しい勘違いになってます。ただし、これは読者にとっては『そうなのか?』という手応えに留めてます。



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 そして③で確認になります。これが現実の出来事であり読者が甲本先生であるならば『ンなコト聞いてねーよ』なんですけど、これによって読者には『あ、美人なんだ』と意識を誘導できます。



 マンガで『読者に美人と認知させる』というのは難しい。これを読まれている方は『美人なマンガキャラ』というのが心当たりあると思いますが、それを知らない方に見せて納得いただけるかと言えば『そうでなかったりする』のが現状だ。世の中には『最新鋭の萌えキャラ』が気持ち悪いって方も居る。逆に『古臭いヒロイン絵』が最高な方も居る。


 そういう『美人だという認知誘導』がマンガの技術のスゴさなんです。



 そして、それだけの情報戦は『僅か五秒で感覚的に理解させる』のがマンガなのだ。ビッチリとセリフが入っていたりすると『情報量が多い』なんて思う方が居るかもしれませんが、それはマンガじゃないんです。マンガのベクトルとは逆なんです。



 このマンガの技術ってのは本当にスゴくて、躍進目覚しい人工知能が最も苦手とする領域ではなかろうか?読者のレベルが上がれば、作者たちも『もっと踏み込んでいいのか!!』ってなると思います。そしたらもっとスゴくて面白いマンガになるはず!!だから、俺たち読者も頑張ってレベル上げようぜ!!もう、作者に責任丸投げしない!!




  

建設業の未来…だけではなく             星野茂樹・石井さだよし『解体屋ゲン』             

週刊漫画TIMES
04 /10 2018


 ちょっと前にも書きましたが、最近は20年近く前の作品『無限のリヴァイアス』にお熱で、特に祐希のセリフである『何もしねえくせに主張ばかりしやがって、しかもそれで何かをしたつもりでいやがる、勘違いすんなっ!!何にもしてねえんだよっ!!お前等は死んでんのと同じだ!!』はとても考えさせられる。このセリフだけでも凡作100本観るより価値があった…と思えるぐらいだ。



 作品は『新世紀に向けてのメッセージ性』というのを意図したと思いますが、20年近く経った今こそ注目したい。



 さておいて。


 以前の職場での『ルール』だ。消耗品である軍手の買い付け担当をやらされたが、①近隣で最安値の店を探す②二時間ぐらいかけて書類作製③稟議待ちで一ヶ月④仕事を抜け出して買いに行く(せいぜい3000円程度)


 …という流れでバカ以外の何者でも無い。しかも、キチンと書いたはずの稟議書が返ってきて、理由を聞いても答えてくれない。1時間ぐらい粘って聞いたら『ハンコの角度が曲がっている』という理由で、ならこれはバットで撲殺しても正当な理由になるなと思った。我慢強いよ、俺。



 そう、会社の上層部全体が『何もしねえくせに主張ばかりしやがって、しかもそれで何かをしたつもりでいやがる』なのである。俺は頃合を見計らって退職したが、半年後ぐらいに消滅した。
 


 自分への戒めにもしたいが『何もしねえくせに主張ばかりしやがって、しかもそれで何かをしたつもりでいやがる』というコトに対して考え続けていきたいと思います。




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 『解体屋ゲン』は考え続ける作品だ。


 先週・今週は美人揃いの工務店というコトで話題性を集めてますが…という話であり



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 最新鋭のパワースーツも着装して『なんだかすごそう』です。



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 ここ最近は『新しいビジネススタイル』に興味津々の光は早速食いつきます。最新鋭の情報を駆使して追っかけもしちゃう!!



 ……が、どうも彼女たちの会社『バブルガム』浮き足立っていると言わざるえない。



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 『こいつが真相みてぇだな』


 …ここで注目したいのが『最新鋭』に対して『二年前の業界新聞』というゲンの長年の蓄積と勘が『答え』に辿り着いたというコト。



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 さらには自慢のパワースーツも現場では役に立たず、彼女たちの生身では熟練した職人の1/6の仕事しかできない。ちなみに今日のテレビニュースでたまたまパワースーツを取り上げてたので見たが『レンタル料が一ヶ月あたり五万~10万ぐらい』とか『埃っぽい現場では故障の原因になりやすい』というネガティブな部分もあったりする。



 『それみたことか!』



 …というヤツがこういう時は必ず出てくる。これこそが何もしねえくせに主張ばかりしやがって、しかもそれで何かをしたつもりでいやがるというものなのだ。それに潰されちゃいけないし、潰してもいけないと信じたい。



 自分の経験で言うと『デジタルカメラ』がそうであった。店に並ぶようになって、それをよくやく買えたのですが、それでも『枚数撮れない』『電池スグ無くなる』『そもそも画質悪い』というものであった。俺は『なんだ、フィルムのがいいじゃん。買って損した』と思った。が、それもすぐに時間が解決してしまった。特に携帯機能に付いてからの進歩は目覚しく、今では完全にフィルムを駆逐してしまった。



 新しいモノを盲信するのも問題だけど、『考えている人間』こそが道を切り開く…というコト。


 
 さらに遡れば『織田信長の鉄砲三段撃ち』なんてあります。否定された新しいものは否定したものに牙をむくというのは今まで数限りなくあったことなんです。『何もしねえくせに主張ばかりしやがって、しかもそれで何かをしたつもりでいやがるヤツ等』には辿り着けない境地なんです。
 


 新しいことは『うまくいかなくて当然』で、その当然をバカにするか可能性を感じるかは本人次第です。このエピソードは建設業の未来だけでなく、これからの日本の労働に対する提案の一つになるでしょう。次回以降のアンサーも楽しみだ。



作品の広がり           佐々木善章・森尾正博『肉極道』

週刊漫画TIMES
04 /09 2018

 マンガ作品は『節目』というのがある。


 まずは『新連載』だ。これが軌道に乗らないからにはどうにもままならぬ。が、それを超えたら『さらに作品に広がりを持たせたい』というのはある。いつもと同じコトだけでなく、世界観を広げてより多くの読者に楽しんでもらうために『さらなる飛躍』というのをしないからには作品が先細りになってしまう。




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 今週の週刊漫画TIMES掲載の『肉極道』はまさにそんな段階になっている。



 作品のフォーマットとしては『ヤル気はあるが経験不足から経営がうまくいかない肉食堂で、肉極道と称される謎の男が素晴らしい料理手ほどきをして解決する』というものである。やはりウルトラマンフォーマットは偉大であるが、この場合のウルトラマンが悪質宇宙人・メフィラスとか暗殺宇宙人・ナックルだったみたいなんですが。



 さておいて。



 この作品はもう『連載初期』ではなくなった。表紙にもなったし、複数回の巻頭カラーにもなっている。週漫を盛り上げるのに欠かせない作品になった。なので、ここ最近の『肉極道』はフォーマットを踏まえつつ、新たな広がりを見せているのに注目だ。



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 女子会入りました!!



 これまで描かれなかった準レギュラーの掘り下げなども含みつつ、この作品の目玉でもある『肉料理』も『女子会受け』のいうこれまでにないジャンルになっております。


 これまでの『肉極道』はガサツな肉料理が多かった。その『ガサツな肉料理がいいんだよ』というのが売りでもあった。が、ここらで『変化球を入れていこう』という配慮が楽しい。マンガというのは『誰も見たコトの無い作品』というのは『実は読者は先の不安な作品などあまり読みたくない』という感じに映ったりするものです。だけど『同じもスグ飽きる』というのがある。そのサジ加減が実に難しい。



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 …というコトで『女子会受けしそうなオシャレな肉料理』が出来た訳で、このまま一件落着…と思いきや?ここでさらなるクエスチョンに繋げて次回に続けてます。さて、どうするのか?



 次回に続けるこのヤキモキの面白さはやはりマンガ雑誌ならではですね。『肉極道』もイイ感じにネクストに移ろうとしてます。




宇都宮 勇

魔中年の書く、かなり結構ダメダメなブログです。週刊少年チャンピオンの感想記事をメインにやってます。

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