動かせ       掛丸翔『少年ラケット』 - 豚か狼か

動かせ       掛丸翔『少年ラケット』

週刊少年チャンピオン
09 /05 2015


 マンガの技術を集約すると『読者を誘導する』というコトにある。


 大ヒット作『ドラゴンボール』ですが、ストーリーに関しては『強い敵が出て修行して勝つ』の繰り返しです。まあ『マッドマックス 怒りのデスロード』も脱走して目的地に何もないから帰ってきたという『そんなバカな?』と疑いたくなるようなものですが。ちなみにこの二つの作品はネタバレの意味があんまり無いような気もする……。魅せる技術に特化しているからね。


 が、世の中の多くのマンガ家は『そういうのが欲しくても手に入らない』のが現状で、それに代わる何かを得ようとする。その試行錯誤が面白い。方法もイロイロあるんですよ。ただ、ハッタリ系よか巧い系のが好みですね。



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 『少年ラケット』がかなり面白くなってきている。このマンガは明らかに『巧い系』の側だ。


 まあ、そもそも卓球というスポーツそのものが地味な訳で。球技に於いても清清しいホームランとかネットに突き刺さるシュートというのが無い。そもそも野球もサッカーボールも『打ち所が悪けりゃ死ぬかも』という無意識の恐れがあるが、卓球の球はせいぜい痛いで済むだろというあたりが地味さを感じさせる。


 が、地味というのも武器で『遅効性』があるというコト。『少年ラケット』の開始から四ヶ月ぐらいだけど、これがジワジワと効いてきた感がある。面白さに対する感情が激しく上下するんでなくて、少しずつ右肩上がりになった感じ。


 このマンガのスゴイところは『ブレが無い』というコト。なんつーか『計算どおりに展開している』というのが明確に感じ取れる。今回は主人公の能力が開花してますが『このマンガは頭脳戦で相手を追い込みますよ』という要素を常に振りまいていた。それこそ開始の1ページ目から。


 また、このマンガで常々関心するのがネームの切り方がえらく巧いというコト。いたずらに派手なネームというのでなくて、計算ずくで描かれている。高いレベルで。ネームというのは普通にマンガを読んでいる方は気にしない。普通にマンガ読んでいる方は『絵とストーリーのスキルがあればマンガが描ける』と思いがちなんだけど、ネームというのは『誘導する技術でも最重要』の領域でこれが人によって全然違う。


 昔、有名アニメーター自らがコミカライズした作品があって、絵は確かに本人であるから『それ以上にはならない』はずなんですが全く面白く無かった。その時の違和感の正体って15年ぐらい経ってようやく辿り着きましたが。


 マンガというのはサービス業で読者を巧くエスコートするのが前提です。キャバ嬢もホストもお客さんにいい気分になるように誘導するのに似ている…なんて自分は思ってます。マンガは芸術でなくてサービス業。


 そして、そのサービス業に細心の注意・念入りな下準備等々が気を配って成立しているのが『少年ラケット』のように感じます。




 
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宇都宮 勇

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