地味にしかし大きな差がつくテクニック       神馬耶樹『マトイ・ナデシコ』 - 豚か狼か

地味にしかし大きな差がつくテクニック       神馬耶樹『マトイ・ナデシコ』

神馬耶樹『マトイ・ナデシコ』
12 /20 2015
 

 三巻以降の展開がちょっと合致しなかったので読まなくなりましたが『進撃の巨人』は絵が巧いと本気で思ってます。同じく『カイジ』などて知られる福本伸行先生も皮肉でもなんでもなく本気で巧いと思ってます。


 自分の目安は『とにかく伝わっている』というのがそれです。


 『進撃の巨人』は巨人が我々を襲ってくるという着想も素晴らしいけど、それを活かしたコト。例えばキレイな魚がいて……まあ、だから金魚なんて観賞するものだ。しかし、それは人間の立場だから。魚に飲み込まれるミジンコの恐怖感……これが『進撃の巨人』にあったと思う。


 マンガの絵というのは『伝わる』というのが大事で、テクニックはその為にある。当たり前だけど、意外に見過ごされていると感じます。『上手い下手』とか『売れる売れない』とか二極化で見られてしまう。マンガというのは絵が連続して成立するもので、その『繋ぎの部分』をコントロールするのが『表情』とかのテクニックに感じる。



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 さて、今回の『マトイ・ナデシコ』は新展開に入りました。例によって『画楽の杜』で公開中なので確認されたし……。


 部員集めがはかどらない中、紫塚先輩には触れられたくない部分があるようで……というもの。今回は『発端』の部分であり、ここら辺から読者に『どういう理由が?』と掴みにかかるのであるが。ここで注目したいのは『どうしてそういう気持ちに動いたか?』という部分だ。これがマンガのテクニックだ。


 『同じ話でも描く人によって全然違う』というのがマンガだ。よく『誰も見たこともないようなマンガ!!』というのがマンガ家マンガにはあるのですが、過去の大ヒットマンガを見ると『1から10まで全く新しい作品』というのは無いだろう。まあ、詰まるトコロはマンガは誰にも分からないのですが、『興味を持ってもらうように展開する』というのは描いている人は忘れちゃいけない要素だし、過去の大ヒット作は例外なくそれは優れている。


 そのテクニックの極意というのは自分は『ネーム』だと思ってます。要領得ない会話というのは聞くのが大変だ。『マトイ』という作品はネームがとてもスムーズに念入りに作られている。上記の画像などはまさに『ネット配信』という媒体を活かしたネームになっている。最近になってスマホに変えたのですが、ネット配信マンガって左から右にスライドしていくのですが、上記の画像の部分は本当に面白いネームになってます。




 そして、今回『マトイ』で注目したいのは『ユーモア』だ。


 『無敵鋼人ダイターン3』ではユーモアをやりたかったのですが、当時の製作レベルではうまくいかなかったと富野監督が言っていて、自分としては『ユーモア?それは俺の思っているユーモアとは違うのか?』と当時は思ったものでず(おおよそ15年以上前)。


 『ユーモア』というものの解釈として『ゲラゲラ笑える』というものだと勘違いしていた。今考えている『ユーモア』というのは『愛想』というニュアンスに近い。『ニコニコしている』とか『なんかしんどそう』とかが一瞬で伝わる描写という感じで。


 『マトイ』という作品は実は主人公・纏はとにかく表情が豊かだ。『ユーモア』がふんだんに盛り込まれている。伝わる。むしろ、それを多く持っていそうな志摩子・カエ先輩よりもあらゆる部分が描写されている。そして、今回は紫塚先輩ですが、これも『ユーモア』だ。


 紫塚先輩のこれまでの印象としては『しぶしぶとなんだかんだ面倒見の良い先輩』とか『アタマが良さそう』とか『大人びている』とかなんですが、今回初めて歳相応に感情的になる描写が入った。この『ユーモア』を入れるコトによってキャラに厚みが出る。


 そして、纏の方としても『自分が最近知ったように人にはイロイロな事情がある』という成長描写があるのも見逃せない。これが1ケタ代の話数で入っていたら『あれ?』となってしまうのだから。


 ちなみに神馬先生の単行本だと『発情オンナノコ』を読むとここら辺のユーモアに対しての試行錯誤があって面白い。自分が読んだところだと


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 『遊佐さんの天然回路』が『マトイ・ナデシコ』に色濃く受け継がれたような……。この遊佐さんはユーモアがタップリなキャラなんですよね。本当に画面のアチコチで愛想ふりまいてて楽しいキャラに仕上がってます。よし、俺も今から散歩に出てパンツを拾おう!!『そんな出会いがあつてもいいじやないか人間だもの  うつのみやゆう』


 まあ、イロイロ書きましたが、マンガというのは『人が読むもの』という前提のサービス業なんです。『なんかイマイチのめり込めない』という作品はユーモアが足りないのかもしんない。当たり前だと思われる要素かもしれませんが意外にユーモアに無頓着(特に新人さん)のマンガも多くて、『ちょっと自分を前に出し過ぎだな』とか感じられることもあります。コレ、地味に大きく差がつくテクニックなんじゃないかと考えてます。

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宇都宮 勇

魔中年の書く、かなり結構ダメダメなブログです。週刊少年チャンピオンの感想記事をメインにやってます。

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